窓に灯

 結局俺は、

「彼女に相談してみるから」

 と返事を先延ばしにした。

 はっきり断ることが出来なかった。



 この日はバイトが入っていた。

「ほらー、席着けー」

「はーい」

 塾講師だ。

 なぜこの仕事を選んだかというと、理由は二つある。

 一つ目は、割がいいこと。

 もう一つは、どうやら恵里が俺のスーツ姿を気に入ったらしいからだ。

「西山先生って、スーツの着こなし上手いですよね」

 俺は度々、女子生徒からこのように褒められる。

「だろ?」

 なんて言っているが、きっとそれは恵里が見立ててくれたからだと思う。

 彼女を俺色に染めたい、なんて男はよく言うが、俺の場合はすっかり恵里色だ。


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