恋せよ乙女

……っていうかあたし、朝のこのひとときだけで、どれだけ笑われるんだろう?

そんな風に思って若干イラッとしていたけれど、目の前の氷室さんの笑顔を見れば、その気持ちは一気に吹き飛んでしまった。

だってきっと、この笑顔を知っているのは数えきれるほどの人しかいないでしょ。

バリバリの仕事人間で、鬼のような生徒会長の氷室さんが、こんな風に優しく笑うなんてきっと誰にも想像できない。

そして今はあたしだけに向けられているこの笑顔に、理由はどうあれ、幸せな気持ちになれたから。


「……なんか紫音、しっぽ振って喜ぶ犬みたい。」

「ふふっ。もうこの際、犬でも猫でも、何でもいいですよ。」


…――ただ、そばにいられるだけで。

一途に、素直に、あたしの気持ちをぶつけられるから。
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