恋せよ乙女
「…さっき、香波がここに寄るって言ってたんだけど、その時何か言われたり、されたりしたの?」
不意に投げ掛けられた核心をつく問いに、思わずピクリと肩が揺れて。その様子を見逃さなかった氷室さんは、あたしの頭にぽんぽんと手を乗せた後、小さく息を吐く。
「そうなんだね。」
「ち、ちがっ…」
もうバレているのに、今さら違うとか言うのもアレだけど。いくら焦って咄嗟に言葉を発したからとはいえ、あたしはどうして庇おうとなんてしてるの。
氷室さんにフラれた鈴木さんが可哀相だから?これ以上鈴木さんが氷室さんに嫌われるのは嫌だから?
否、全て違う。
あたしはただ、怖かっただけ。
さっき鈴木さんが言っていた言葉を、全て氷室さんに確かめるのが。だから恐れて、事実を隠した。言わば、ただの臆病者だ。
でも結局は、あたし自身も彼を疑っていることに気づき、そんな自分を心底嫌悪した。