恋せよ乙女

――でも。

とりあえず、学校には行かなきゃ…。

その思いだけで支度をし、のそのそと家を出る。ドアが閉まる間際、お母さんが「朝ごはんは?」とか言っていたような気がするけれど、今のあたしに食欲なんてあるはずもなく、聞こえなかったフリをした。

そして、見慣れた道を一人で黙々と歩く。途中、同じ制服を着た数人に追い抜かされたけれど、そんなのは気にしない。

ふと立ち止まり、見上げた空には、白い雲が流れていた。

…――それにしても、今日も天気がいい。
照り付ける太陽と透き通るような青空が、今は異常にうっとうしくもあるけれど。

どうせなら土砂降りにでもなって、あたし自身を溶かして流してくれたらいいのに。

綺麗さっぱり消えてしまえば、感情なんて無くなってしまえば、傷つくことなんてありえないのに。

そんな風に、朝から無駄に感傷に浸ってしまう自分があまりにも滑稽で、自然とため息が零れた。
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