恋せよ乙女

そして、一向に電話に出ないあたしに業を煮やしたのか、最後には一通のメールを受信していて。


“紫音と、話がしたい。”


たったそれだけの短い文章に、ズキンと胸が痛んだ。

会いたくて、抱きしめてほしくて。
胸ははち切れそうなのに。

氷室さんを思い出すと同時に、頭をよぎる鈴木さん。頭を振って必死に追い払おうとしてみても、余計虚しくなるだけ。

いっそのこと、全て忘れてしまえたら――…

氷室さんのことも。
鈴木さんのことも。
あたしが氷室さんを好きだという、その想いさえも。

そうしたら少しラクになるんじゃないかと考え、そんなことまで考え始めた自分自身を自嘲した。
< 235 / 396 >

この作品をシェア

pagetop