恋せよ乙女

「何でもなくなんて…、」

「おーい、早く席につけー。」


あたしを問い詰めようと世奈が口を開いた刹那、ガラッという音と同時に響いた担任の声。

いつもは何だかんだ文句を言ってしまうようなその声に、今ばかりは助けられた。

だって、たとえ世奈にぶちまけてしまうにしろ、今この場で話したくはない。それに、今なら確実に、また泣いてしまうだろうから。


「……世奈、悪いけどこの話は後で。」

「はぁ……。仕方ないわね。でも後で、ちゃんと話してよ。一人で溜め込まないで。」


小さなため息を漏らし、あたしの肩にポンポンと手を置いてから、世奈は自分の席に戻っていく。

そしてあたしは、話し始めた担任の声を聞くことなく、窓の向こう側へと視線を投げた。
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