恋せよ乙女

「ねぇ……、」


未だあたしを捉え続ける視線は、とてつもなく鋭い。


「恭君と、別れてよ。」


訴えかけるように紡がれた言葉は、静まり返る教室の中、やけに響いて聞こえた。


「……別れる? あたしが?」

「あなた以外に、誰がいるの?」


ゆっくりと、悲しそうに鈴木さんの口許は弧を描く。別に何もされていないのに、その雰囲気が、軟禁された日のことを彷彿させた。

脳裏を過ぎるあの日の恐怖に、若干脈拍は速まったけれど。そのイメージを追い払うように、大きく首を横に振る。


「……無理、だよ。」

「……何? 何て言ったの?」

「無理、って言ったの。あたし、この先何があったとしても、氷室さんと別れる気なんて無い。」


そして再度強く言い放った言葉に、鈴木さんの表情は悔しげに歪む。ギリッと、奥歯を噛み締めた音が聞こえた気がした。
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