恋せよ乙女
ただ、じわじわと広がっていく沈黙に、壁に掛けられた時計の秒針の音がやけに響く。
たまたま触れてしまった机が、かたん、と小さな音を立てた。その音を合図にするかのように、鈴木さんがゆっくりと氷室さんから離れる。
そして小さく息を吐いたかと思えば、刹那、若干赤くなった鈴木さんの瞳はあたしを捉えた。
「………ごめんなさい、って言ってもきっと、許してはくれなそうね。」
まるで自嘲するように、独り言のようにそう零し、ただ彼女は苦笑する。言葉とは裏腹に、伏せた瞳にかかるまつげが悲しそうに揺れた。
「いや、あの、鈴木さん…、」
「何にも言わないで。別に私、許してもらおうとは思ってないから。」
けれど、あたしの言葉を遮るようにそう言い放った鈴木さんは、いつもと何ら変わることなく凛としていて。
「同情なんて、いらないわ。」
相変わらず刺々しい物言いが、あたしに向けられる。