恋せよ乙女
―――そして。
「…――そんなに、加藤さんが好き?」
さっきまでと比べ、少し落ちた声のトーンに、小さくなった声。まさかの問いに、思わず肩をぴくりと揺らしてしまったけれど、そんなあたしの反応を気にしない感じで、今まで口を閉ざしていた氷室さんがようやく口を開いた。
「好き、だよ。」
そう、たったそれだけ……だけれど。
端的に、躊躇うことなく紡がれた言葉は、あたしの耳にもしっかり届いた。
でもその言葉を境に、俯いたまま氷室さんにもたれ掛かる鈴木さんの肩が、小刻みに揺れて。
「私も、恭君が好き。ただ、それだけなのに……。」
ぽたり、そんな聞こえる訳の無い涙の落ちる音が、床に吸い込まれる間際聞こえたような気がするけれど。
微かに呟かれた言葉は、誰にも聞かれることなく宙に消えた。