心の傷
「いつも遥日ちゃんにはご飯用意してもらっているから今日はママ、頑張っちゃう!遥日ちゃんは宿題でもしていて」

 腕まくりをしながら拳を胸のあたりで握り締めるママはどう見てももうじき三十になるようには見えなかった。

ましてや中学生になった子供がいるようには見えない。

 私より子供っぽい仕草や話し方。

私たちが一緒にいても親子に見られる事はまずない。せいぜい年が少し離れた姉妹に見えているようだ。

この人が女手一つで今まで私を育てながら家計を支えてきたなんていまだに信じられない気持ちがする。

「本当に大丈夫?」

 なんだか心配な気持ちで聞いてみる。

ところがいつになく自信満々な様子でママは「大丈夫」と言って拳を突き上げた。

「いつも遥日ちゃんに頼りっぱなしでママらしい事していないから今日ぐらいは頑張るの!」

 ママがその気になっている。

こうなってしまうと誰が何を言っても無駄な事を私は今までの経験でよく分かっていた。

「分かった。じゃあ、私は部屋で宿題しているから、どうしても手伝いが必要になったら声をかけてね」

「遥日ちゃん、ありがと」

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