【コメコン】オレんちの兄さん1
騒がしい教室から廊下に出ると、ドア付近に立っていた女子生徒数人に声をかけられた。
「あのさ……狩谷(カリヤ)くん」
「何だ?」
用があるなら早く済ませて欲しい。
太一のバカに絡まれたせいで、休み時間はあと五分しかなくなっていた。
しかし、そんなオレとは裏腹に、彼女達はなかなか話を切り出そうとしない。
誰が話すかを決めあぐねているように、アイコンタクトをとりあっている。
…………これでは、埒があかない。
「はぁ」
聞こえないくらいの声でため息を吐くと、
「悪いけど、後にしてくれる?
しなきゃいけないことがあるから」
普通に言ったつもりだったんだが、苛立ちは声にも現れていたらしい。
彼女達はビクリと体を震わせ、蚊の鳴くような声で謝ると、足早に去っていった。
………なんだったんだ、一体。
てゆーか、それ以前に誰だよ。
あんな奴ら、オレの知り合いにいたか?
……あぁ、もしかしたら。
オレじゃなくて、兄さんに用があるのかもしれない。
この辺に住んでる奴で、兄さんのこと知らない奴はいないからな。
さっきの女子達も、兄さん目当てでオレに近づいてきたのかも。
(………なんか、ムカつく)
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