Utopia
飛香は朝の辛さなんて知らないんだろうな。
ギャーギャーうるさい飛香を押し退けながらぼんやり考える。
ああ、飛香が都堂家にいればいいのに。
たぶん飛香なら窓から放り投げるぐらいの度胸はあるだろう。
「よ、優季。」
「…………!」
「なんだよ、その眼。」
自分の席に向かうと進がいた。
まあコイツの席は私の隣なのでなんの不思議もないのだが、そんなことではない。
「あっれー?有森がギリギリじゃないなんて初めてじゃん!…ていうかあたしに挨拶は!?」
「ああ、いたのか峰岸。」
「貴様…!」
そう、そこ。
「早いね、進。」
「兄貴が帰って来るからな。」
親のテンションが高いんだよ、と苦笑いが返ってきた。
進とまた取っ組合いをしていた飛香は、他の女の子に日直だとか言われ、引きずられていった。
「……まー、進にも言いとこそれなりにあるよ。」
鞄から教科書を出しながら進に言った。
「なんだよいきなり。」
「優秀な兄を持った弟はさぞかし複雑だろうなー、と。」