ポケットの恋
カラオケボックスでの事件から、数日たった後である。
「はぁ!?携帯どっかやった!?」
気まずそうに真実の家にやってきて、幸日が言った言葉がそれだった。
「違うの!多分カラオケにあると思うの。慌てて置いて来ちゃっただけ!」
「ったく…馬鹿ねあんた。なんでそうポーっとしてるの」
「なっ…違うよね!それ違うよね!派手ウサギにアドレス聞かれた時に、あたしの携帯取り上げて投げ捨てて、そんなもの持ち合わせていません、って言ったの真実ちゃんだよね!」
何度かあの日のことを話す内に、リーダー格の男は「派手ウサギ」で定着した。
「あたしはちゃんと自分の携帯拾って持って帰ってきたもん」
必死の抗議に真実はしれっと返した。
幸日も本気で責めているわけではない。
何年も仲良しさんだ。お互い間合いは理解している。
「違うのー!そういうことが言いたいんじゃないの!
「じゃあなぁに?」
わざとわからないふりをしてみる。
真面目に返してくるのが幸日の可愛いところだ。」
「携帯取りに行くのついて来てー!」
「…やだ」
「なんでそうなるのー!?そこはついて来てくれるとこじゃないの!!」
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