夜  話  
烈しく万物を灼いていた太陽も、夕立の過ぎ去った後は穏やかに姿を隠し。


けだるく暮れゆく空は、息が苦しくなるような重い空気をほんの少しだけ涼やかに染め変えて、刻々とその色を変えていました。


湿気の多い、まとわり付くようなこの暑さと、人工的な冷房を今だに好きになれないわたしは、ようやく訪れてくれた夜に安堵しました。


身体の中に、こごっている熱気を追い出すように深く息をつきます。


ヒグラシ達の声も今はもう消えていて、気の早い草むらの虫達の声が、ゆるく吹く風にのって微かに聞こえてきています。



今夜もまた。





満月の夜なのでした。
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