夜  話  
爽やかな夜風が、さらりと流れていきます。


日中はまだまだ残暑が厳しいというのに。


夜は訪れかけている秋の気配をふんだんにその身にまとっているのでした。


息をするのにも辛く思える程に、濃厚だった空気も秋の気配と共に爽やかに澄み渡り、呼吸のたびに体内にこごった熱をぬぐいさってくれているような心地でした。


まあるく。


おおきく。


育った月が、重たい身体を持ち上げるように山の向こう側から身を起こしました。


そうして今夜も。


満月の夜が訪れたのでした。
< 173 / 414 >

この作品をシェア

pagetop