夜  話  
冴え渡る夜空はビロードのようなトロリとした紺色に、きん、と張り詰めた硝子のような空気を満たして今夜も広がっていました。


玻璃の欠片をちりばめたような小さな輝きを放つ星達が、またたきを繰り返しながら、たゆたっています。


今夜も、わたしは満月が昇るのを待っているのでした。


澄んだ空気が行き来する、開け放した窓の前で、わたしはスケッチブックを広げて待っていたのです。


色画用紙を綴ったスケッチブックの中から、わたしが広げた色は黒に近い紺色の紙でした。


そうして。


選んだクレヨンは白でした。
< 245 / 414 >

この作品をシェア

pagetop