夜  話  
胸いっぱいに吸い込むと、ちり、と喉の奥で音を立てそうな冷たく澄んだ夜の風を、さやさやと身に受けながら、わたしは一心にクレヨンを動かしていました。


「冷えるぞ?」


少し、絵を描くことに熱中しすぎていたのでしょう。


突然かけられた声に、わたしは大きく身体が反応するぐらい驚いてしまいました。


「………皎!」


わたしが絵を描いている小さなテーブルを挟んで、間近から覗き込んでいる綺麗な顔に、わたしは心を踊らせながら声を上げました。
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