夜  話  
「あっ……っと。え、と。」


とっさには言葉が出ず、口籠もった俺を見て、彼女はくす、と笑って言った。


「満月の夜に空を飛ぶなんて、どんな魔物かしらと思ったのだけれど、悪い人ではないのかしら?」


そう問われた事で、俺はようやく頷いて答えを返すことが出来た。


「怪しいだろうが、害をなすつもりはない。少し休もうとしていただけだ。」


俺はそう告げ、彼女のそばへ寄った。


彼女は頬に手を当てたまま、ただ黙って俺を見ていた。


「もちろん、目障りならすぐに立ち去る。」


だが、ただ黙ったまま俺を見つめるその態度に、歓迎の気持ちを読み取ることはできず、諦めてきびすを返そうとした俺の袖が、何かに引かれた。
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