夜  話  
「待っててね。今クッションを用意するわね。」


彼女はそう言って部屋の隅に小走りに駈けてゆき、窓の近くに置かれてあった長椅子に俺を誘うと、両手いっぱいに抱えて運んできた小さなクッションの山を、俺の背中へあてがった。


そうして、自分は床の上にぺたりと座り込むと、俺に話し掛けた。


「あなたは、だぁれ?私は、エン。この部屋の住人なの。」


にこり、と笑みを浮かべて言う彼女に俺はなんだかペースを崩されて、長椅子の上でゴソゴソと身じろぎをしながら答えた。


「俺はコウ。月の使いをしている者だ。」
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