夜  話  
「あ……りがとう。」


少し言葉につまりながら、俺は彼女の誘いに礼を述べ、部屋の中へと降り立った。


彼女が身を乗り出すようにして、外を覗いていた窓には葡萄の蔓を意匠化した鉄製の窓枠で縁取られていて、淡い柘榴色の薄紗がかけられていた。


そのやわらかい布地に絡まらないように通り抜けた俺は、彼女の部屋の中を目にして息を飲んだ。


小さな窓からは想像出来ないほど、その部屋は荘厳で美しく彩られていた。


部屋の中央には天蓋のついた、彼女には不釣り合いなぐらい大きな寝台。


葡萄の蔓の意匠で統一された調度品は、寄木細工や細かな彫刻が施され、そういったものに詳しくなかった俺にも、決して廉価なものであるとは思えなかった。
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