夜  話  
「本当に?」


信じられないといわんばかりに、目をまんまるに開きエンは俺の手を取った。


「嬉しい。……でも、あなたのお仕事の邪魔にならないかしら。」


はた、と思い当たったかのように言うと、エンは俺の手を離し目を伏せて、哀しげな表情になった。


「私があなたのお仕事の枷になるような、約束はして欲しくはないわ。」


でも、と。


彼女は少し口籠もりながら言った。


「でも……ね。
もし、あなたのお仕事に少し余裕があって、
もしも……ね。
ちょっと行ってもいいな、と思ってもらえるなら。
たまに、ね。
たま、でいいの。
また、お話聞かせてもらえないかしら?」
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