夜  話  
俺の話に目を輝かせたり、笑ったり涙を浮かべたりしていたエンは。


やがて、少女から大人へとその姿を変えた。


俺が訪れる度に、少しずつきれいな娘になっていっていたエンの口から、結婚の言葉が零れた。


「明日、隣国の王子さまと結婚するの。」


いつもの笑顔と変わらぬまま、エンは俺に告げた。


父王は、交易に力を入れていて最近国力を伸ばしてきていた隣国の末の王子をエンの相手に選んでいた。


しかしその結婚は、彼女が豪華な鳥籠のような部屋から出ることを意味していたわけじゃなかった。


エンは変わらずに部屋から出ることを禁じられていて、父王の選んだ一握りの者以外とは逢えないままだった。
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