夜  話  
わたしは、胸に抱いた皎の手を引き寄せるようにして、皎の腕全体を抱き締めました。


少しでも。


皎に近い所まで寄り添いたいと、そう願って。


そんなわたしの行為に、近くなった皎の表情は少し緩んだようでした。


ふ、と。


小さく。


皎の口元から吐息とも、笑みとも取れるような小さな音が聞こえました。


「………あの人は、俺を失ったことを酷く嘆いていた。
けど周りの人間は、あの人の能力が失われずに、損なわれずに済んだことを歓迎していた。
あの人はそれを哀しく思いながらも、自分に課せられている役目の大きさを知っていた。」
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