BLACK 〜それでも君に出会った〜
『町田結生さーん。』

受付の人が、
あたしの名前を呼んだ。

激痛で動けないあたしの代わりに、
父が立ち上がって会計を済ませた。

戻ってきた父は、
無言であたしを抱きかかえ、
外へと向かった。

この時遠ざかっていった、
モノクロの景色を、
あたしはきっと忘れない。


中学生活最後の全日本選手権を
3日後に控えた、
冷たい真冬の夜だった。
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