ユメモノガタリ

アタシが生きていける、唯一の場所だから。


「おい!」

立ち上がったアタシの腕をあなたは掴む。

「行くなや。」

あなたの瞳はまっすぐアタシだけをうつす。
思わず吸い込まれそうだ。
だけどあなたの言葉もバカ女に戻ったアタシにはもう聞こえない。

「無理や。もうアタシは二度と戻れへん。

行くしかないねん。」


アタシはチャリにまたがる。

鴨川に吹く風は今日はやけに冷たい。


京阪電車、七条駅。

学校にもすぐ行ける。

アイツらのところにも、
チャリなら時間はかからない。


こぎだしたチャリは
クリスマスを待つ幸せそうなカップルたちを見つめるアタシを乗せて進んでいく。



このまま、
どこか遠くへ行けるなら

できるなら空に消えれるなら

どんなに幸せなんだろう。


でもアタシにはできない。

だってアタシは
臆病で、
死ぬことも自分じゃできないから。



京都タワーが自棄に
目に焼き付いた。
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