追憶 ―箱庭の境界―
私は言葉を続けた。
内容には時折「嘘」が混じる。
しかし誰にも判りはしない。
苛立つ感情を全て、
リオン様にぶつけていた。
「貴方を消せば、あのバリアもなくなるというわけですからね…。こちらも機会を伺っていましたよ?しかし、なかなか尻尾を出さない…。用心深い貴方がわざわざ出向いてくれた今!…私もチャンスということですよ!」
私は掌をリオン様に向け、魔術を放つ格好で構えた。
「この人数相手に一人で勝てると思っているのか?」
そう意気込むリオン様、
キース君。
そして、魔力を持たない若い男女が1名ずつ。
勝つ気は、
…無いんですよ。
でもね…
私は掌を胸の前に置いた。
その手を一瞬光らせると、
手の上には、
肌色の物体が現れる。
「さすがに1人では厳しいですからね…。これ、何だか分かりますか?」
「…!?」
生きている、心臓。
それはドクドクと脈打つ。
「これがあれば、持ち主は私の思いのまま…。どなたの物だか…、もうお分かりか?」
――リフィル様の心臓。
「これで手が出せないでしょう…?ふふふ…」
私は気味悪く、微笑んだ。
未だ…
未だです。
「死に場所」が欲しいのです。