追憶 ―箱庭の境界―


「どうぞ私に構わず!!」

「――…!?」

談話室の入り口から、
予定外の声が響いていた。

リザに寄り添うリフィル様が必死の形相で立っていた。

部屋に足を運びながら、その手には鋭く光る短剣が握られ、自身の喉を捕らえていた。


な……何を、
して…いるのですか…

私が生涯、
これまで生きてきた中で、
1番凍り付いた瞬間だった。


「…何の真似です?死ぬのが怖くて、今まで服従してきた貴女が…?」


「リオンが来てくれた今、後の事はリオンに任せられます…!私を盾にしても無駄です!」

刃先で傷付いた細い喉に、
つぅ…と血がつたう。

真剣な表情。
彼女は、本気なのだと悟った。


そんなに…
私が憎いですか…リフィル様。

でも…
今、貴女に死なれては困る。



「リオン様、今日のところは私が退きましょう。」

「…なっ!?」


リフィル様の手から短剣が離れ、音をたて床へと落ちる。
同時に彼女もまた床へと倒れた。


「…マ……ルク…!」

私を恨めしそうに見つめ、彼女はゆっくりと瞳を閉じた。


「姉上!!」
「――貴様!!」

周囲の心配の声。
そう、
私が彼女の自由を奪い、
眠らせた。


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