追憶 ―箱庭の境界―
「…鬼さん、前に私に聞いたわね?私の名前『瑠璃』は真の名か?って…。」
其れは、
初めて少女に逢った日に。
「洗礼を受けて、全部思い出したんだ。真の名だった。私の名前は、ルリ。」
『……ル…リ…?』
――ルリ島。
リフィル様が言っていた。
幽閉された「箱庭」で。
『…私たち、きっと何処かで運命を歩き間違えちゃったのよ。間違えなかったら、私と貴方は結ばれて…、子供を授かったりしてたんだわ、きっと…』
そんな馬鹿な…と、
ただ…首を横に振っていた。
『…女の子が良かったわね?名前は…、そうね…ルリ。島と同じ名前なんて嫌がられちゃうかしらね…』
リフィル様は、
何処か悲しそうに笑っていた。
『…マルク、あの桃色の樹を覚えている?私たちが出逢った樹よ?…3人で眺めたり、したかったわね…?』
あれは…、
…想像上だけの事。
私たちの、願い。
「…何で鬼さんを放っておけなかったのか…、心配だったのか分かった。」
『………』
我はそう話す少女を、
食い入る様に見つめていた。