赤い手の人
きれいな人
冷たい空気が喉を刺した。

ここはどこだろう……。
当たりは暗く、視界は白くぼやける。

地面だろうか、私は固い所に寝そべっているようだ。
目が覚めた私は、自分の現在位置が全く分からないことへの不安を感じていた。
意識が落ちる前の、あの感覚が蘇る。


―恐怖


体験したことのない恐怖だった。
まだ頭がじんじんと波打つ。

その時、ゆっくりした靴音が聞こえてきた。
その音の主は、少しためらうように、私に声をかける。
「……おはよう、ございます」
あぁ、この声だ。
低い通らないノイズのような声……。

逃げよう。

と、思った。
どこかで、ぎゅっ、と雪を踏む音がした。

そこで私は初めて気がついた。
手術台のようなものに、大の字に寝かされている私の手足。
いずれにも自由は与えられていない。

動く。ぎゅっ。
動く。ぎし、ぎし。

縛られている……?

例の、声の主は私の頭の上にいる。
その顔は暗くて見えない。


これが夢でありますように……。
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