赤い手の人




その日は、前日の雨が嘘だったと思うような晴天だった。
地面はまだ湿気を吐いているけど、寒く、乾燥し始めたこの季節には丁度よく感じる。
日曜日の憂鬱も、これでうまく消えそうだ。

秋から冬へ変わっていく空はすっと高い。
はけで引いたような雲は、流れずに寝そべっている。
天気予報が当たれば、今日一日はこのまま、昼寝には最高、窓際の学生には最悪の気候になる。

私は、少し背伸びをして高校生になったため、みんなに追いつくだけで必死だ。
毎日が受験前ぐらいの勉強量に、また昨夜も遅くまでだらだらしていた。
今日もまだ寝たいとグチる体と頭を引きずって家を出る。
誰か時間を止められる人がいたら、ぜひお願いしたい。




「ふぁ……」
学校は毎日あくびが漏れるくらい暇だ。
今日もいつもと同じように授業を受ける繰り返しで。
それに、友達もいない私は、学校は決して楽しい所とは言えなかった。
まぁ、友達が受けないのを承知でここへ入ったのだけど。
旧友がいない寂しさがこれほどだとは思わなかった。
休み時間だって、予習のために訳の分からない教科書とにらめっこ。
例えでも何でもなくて、本当にやることがないから。
もうどうしようもなかった。

「ふぅ……」
窓際の隅っこの席で、あくびやため息ばかりするから、友達が出来ないんだろうか。
私から話しかけることもないから、それじゃあいないのも当然だよね。

窓の外に目を向けても、眠気を誘う風景しかないわけで。
風はなし。気温は低いけど日差しがぽかぽか。

教室の中はずいぶんと賑やかだ。
ちなみに今はお昼休み。
雑談相手がいないと、食べる速度が上がるのは嘘ではないようで。
私はもう暇を持て余しているのに、まだ食事中のグループはちらほらあった。
入学から半年もすれば、ある程度の集団はできるものの、私はどれにも馴染めそうにない。

そう、私は既に暗いキャラで定着しているんだろう。
暗いと言うか、無口、おとなしい、って感じか。


これでも、ずいぶん一人には慣れてきた方だと思う。
部活動なんかはしていないから、親しい友達も増える訳はない。


覚悟は決めていたものの、友達、と言える人が少数なのはちょっと寂しいかな。
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