My Dear Bicycle Racer!!
1st.Tears and a man
「お前さ、うザイんだよね。二度と俺の前にツラ見せないでくれる?あと、telもメールもシカトするから。じゃ」
 放課後に半年も付き合ってた彼氏である、月原拓真(つきはらたくま)に呼ばれて、いきなりこんなこと言われた。正直、私こと、嘉納明日香(かのうあすか)はどう受け止めたらいいか分からない・・。
「ねぇ!待って。なんでいきなり、こんな事言うの?おかしくない?」私はそう言いながら拓真を引き留める。だが、拓真は私に見せたことない威圧感たっぷりな顔をきかして私に言い放った。
「あのな、俺の女になるならさ、ヤルのが当たり前なの。それなのにテメーは俺がヤラシテと言っても、嫌だとぬかしやがるし。あと、ピーピー泣く女は嫌いなんだよ!!さっきも言ったけど、二度ツラ見せんな。いいな!」拓真はポケットに手を突っ込み、私から姿を消すように歩いて行った。
 どのくらい時間が経ったか分からない。私は拓真の言葉を振り払うか如く無言のまま、下足室で靴を取り出し外へと出る。あの会話に他の人がいなかったのは唯一の救いと言えるだろう。

今までの人生の中で罵声とか言いようがないのは初めてだ。ほとんど、下をうつむきながら歩き、「自分は身体目的のために付き合ってたのか」と考えてた。
ふと、前を見ると、そこは港湾区の大通り。駅とは逆方向に出てしまった。
「あ~しまった・・・やっちゃった・・・」
そう言うと、私は逆方向に足を向けようとしたとき、声が聞こえてきた。
「明日香っち~!!」
振り返ると、親友の新井えみりだった。新井は私が中学生の頃からの同級生であり、大の漫画・アニメ好きである。私は漫画類は読むものの、どっぷり嵌るタイプではないので新井のように詳しくは語ることは出来ない。だが、私は新井に相談することが多く、新井も私に的確なアドバイスをしてくれる。
「えみり、どうしたの?もしかして、新しい漫画でも買ったの?」
「おお~もちのロン!!なんと、10冊も買ったのだよ~今夜は徹夜だね~って明日香っち。泣いてた?つか、泣いた?どしたん?」
「え?な、泣いてなんかないよ。気のせいだよ」
「うんにゃ。泣いてた。その証拠に泣いた後がある。」
新井の言うとおり、私は拓真に振られた後、声を殺して泣いていたのだ。








< 1 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop