Salvation 〜救い〜
トシキ 1

路地裏

あれ・・・なんだ・・・これ・・・・・。


ここ・・・どこだ・・・。


よく・・・見えない・・・。


なにが・・・起こったんだっけ・・・。



少しずつ目の前のモヤが晴れてくるように

トシキの目のフォーカスが整ってくる。



またやってしまったのか、俺・・・。



足元に

はいつくばっている

3人の男を見下ろしながら

トシキはつぶやいた。



一人は

完全に意識を失っているようで

もうぴくりとも動かない。



もう一人は

ひざまづいて

腹をかかえて

苦しそうに嘔吐を続けている。



最後の一人は

倒れこんでいて

いも虫のように身体をかがめて

低いうなり声を発している。



3人の間に

点々と

吐瀉物と血のりが広がっている。



それらを目で追って

最後に

自分の身体をチェックしてみる。



同じものが

ジーンズやジャンパーに付着していた。



「帰ってすぐに洗濯機に放りこまなきゃ・・・。」



「でも、ちゃんと落ちるかどうかわからないな。」



トシキは

このうす暗い路地裏を

立ち去ろうとした。



「てめぇ・・・覚・・・え・・・て・・・ぐおっ」



ひざまづいていた男が

トシキの後姿に向けて

精一杯の悪態をつこうとした。



しかしそれは

再度こみ上げてきた

吐き気に

かき消される結果となっただけだった。



180センチを超えるであろう

長身のトシキは

頭部だけを回転させて

男達がもう襲ってくることはないのを

確認した。



そして

路地の向こうの大通りを目指して

足早に歩き出した。



口の中にたまった血を

つばと一緒に

路地のはしの溝めがけて

勢いよく吐き出した。



ペッ



「いてっ・・・。っちっきしょう・・・。」

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