Salvation 〜救い〜

雨の金曜

次の金曜の夜は

雨が降っていた。



また一気に

梅雨に逆戻りしたような

暗くじめじめした雨が

朝からずっと降り続いていた。



トシキは学校を終えて

○○町へ向かう電車に乗り込んだ。



雨だというのに

電車の中の人々は

金曜の夜だからか

皆明るい表情を浮かべていた。



そんな人々をなんとなく見ていると

すぐに電車は○○町へ着いた。



降車するトシキは

この繁華街で飲んできたのであろう

酒臭く大声でがなり立てている人々と

たくさんすれ違った。



北口の改札を出ると

グリーンという名の喫茶店は

すぐにわかった。



小さい緑色の立て看板に

粗末なネオンで「グリーン」とあった。



どこにでもありそうな洋風の扉を押すと

カラン

と鈴が鳴った。



中へ入ると

横井は既に席でタバコをふかしながら

スポーツ新聞を読んでいた。



「おぉ、トシ。よく来てくれたな。」

と笑顔を作るが

その眼は笑ってはいなかった。



「うん・・・。シュンちゃんの頼みだし・・・。」

と言ったところで

横井がすぐに次の言葉を発した。



「トシ。今夜はこれから俺のこと呼ぶ時には『横井さん』って呼んでくれねえか?仕事以外のときには今までどおり『シュンちゃん』でいいけどよ。」

とまた

愛想笑いを浮かべた。



「・・・・。わかった・・・。」



「で、今夜のことだけどな・・・。」

横井はトシキに顔を近づけて

声をひそめた。
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