Salvation 〜救い〜
「ひさしぶりだな、坂口。お?」

横井は素早く

ドアのすき間に

身体をすべりこませていた。



「ひっ・・・!」

中は暗いのでその表情は見えないが

突然の招かざる来客に

あわてふためているのは

よくわかった。



「おい・・・。」

横井がまた目くばせをする。



三人とも部屋の中に入り扉を閉めた。



「よっ・・・よっ・・・横井さん・・・、俺・・・。」

部屋の奥に逃げこもうとしながらも

必死で弁解しようとする坂口。



横井が

後ずさるその顔面に

パンチをぶちこむ。



バギッ



鈍い音が部屋中にこだまする。



リビングのソファの上に

くずれ落ちる坂口。



「かっ・・・かんへんひてくれぇ。」



まともにしゃべれなくなったようだ。



ドスッ



坂口の言葉を無視して

今度はみぞおちあたりに

横井が蹴りを入れる。



「うぐっ・・・・おぉう・・・。」



身体を二つに折って

のたうちまわる坂口。



「なぁ、坂口よぉ。あんまりナメたマネしちゃダメだろうがよ。お?」



つっぷしている坂口に

さらに馬乗りになろうと

横井がした瞬間



「うあああぁぁぁぁ!」



坂口がナイフを手に

襲いかかってきた。



刃渡りの巨大なナイフだった。



その光景を最後に

トシキの記憶がなくなった。
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