なんでも屋 神…第一幕
パーカーを下ろしたJは、黒い短髪を無造作に立たせ、笑うと白い八重歯の見える、まだ幼顔の少年だった。



ペインターは本来武闘派では無い。ただ、他のペインターギャングとの諍いなどが有る時だけ、仕方なしに暴力を振るう。良いように言えば、少し血の気の多い芸術家と言った所だろうか。



だが、瞼の上に幾つもの切れた後が有る為、それなりに場数を踏んでいると言う事は見て取れる。



「そうだ、秀太にも協力して貰おうと思って連絡したけど、電話が繋がらなかったんだ。彼奴は今何やってんだ?」



「秀太さんは今アメリカに行ってます。アメリカを一周しながら、グラフティの腕を磨くそうです。」



勿論日本でもアメリカでも、人の所有物である建物の壁に絵やグラフティを描くのは違法である。



しかし、人種の坩堝と言われるアメリカでは、それを芸術だと評価してくれる人も、のし上がる手段としているペインターも沢山居る。



プロのペインターになりたいなら、海を越える事は必須科目と言えよう。
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