なんでも屋 神…第一幕
此処のマスターは空気が読める人らしく、俺の前に球体の氷に冷やされたスコッチを置くと、逆側のカウンターに行って他の客と世間話しを始めた。



「これを使わなきゃいけないような仕事になるのか?」



「護身用さ。使わないで済むなら使いたくは無い。」



薄暗い店内には、昨日とは違い黒人のソウルが、微かにだが力強く流れている。此処のマスターはセンスも良いらしい。気に入った。



「なら良いが…近々使う事になるかもしれねぇぞ。お前最近若い女と居るだろ。」



…一葉の事に間違いなさそうだ。兄ぃはこっちを一切見ずに話しを続ける。



「そいつが[須藤工業]の風呂から助けた女らしいじゃねーか。そこまでは無茶する若い奴が居るって噂で聞いてたから別に良い…問題はその後だ。」



そこまで話すと、兄ぃはこっちを向いて俺の右腕を強く掴んだ。



「最後に[須藤工業]のチンピラに名乗りくれたらしいな?その噂を聞きつけた[住谷組]の腐れ残党共がお前を捜してる。」
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