WILD ONE ~キミに夢中~
抱きしめたアッキーは思ってたより温かかった。

「……アッキー、泣いてていいよ」

「泣いてねぇよ」

少し籠った声が耳に心地いい。

高藤とは正反対の結論を出したアッキー。

お人好しアッキー。

「泣けばいいのに……」

「アホか……」

私の前でだけ、泣けばいいのに……。

ミサキの前でだけ、あんな困った顔すんなら、

私の前でだけ、泣けばいいのに──

へんな独占欲にかられる私の胸に埋もれたまま、真っ赤はしばらく動かなかった。





カチカチと古い掛け時計の音がやけに耳について。

もしかしてお腹鳴ったらどうしよう……。

この体制でお腹鳴ったら、孫の代まで笑われるに違いない。

そんな下らなくて重大な乙女の悩みが頭を駆け巡り出した頃、腕の中の真っ赤がピクッと動いた。

そして──

「……お前、胸ないよな」

はぁ!?

空耳に違いない。

この場のこの雰囲気で──

「A?それともスーパーマイクロA?」

こいつマジあり得ない!!

……死ね。

「あ゛?」

……なんでこれだけは伝わるんだろう。
< 158 / 245 >

この作品をシェア

pagetop