WILD ONE ~キミに夢中~
急にシラケた空気に緩んだ私の両腕の中で、モゾモゾとアッキーが動いて『プハッ』と顔を出した。

それはまるで卵からかえった雛鳥みたいで、また私の深い部分をくすぐる。


そしてボサボサの髪のまま『……愛しとーよ、タキちゃん』と口角を上げ、私の両腕をやんわりとほどいた。

迷子の狐はどうやら無事に生還したらしい。

立て膝の体制からストンとお尻を畳に落とした私の頭上に、小さく掠れた『ありがとな』が降ってくる。

どうしても顔を上げられなくて、さ迷わせた視線がとらえたのは灰皿に置かれた燃え尽きた煙草。

「……終わらせてぇよ。俺……アイツらがダメになればいいなんて思ってねぇもん……」

私がキミの代わりに泣いてあげられたらいいのにね……。

助けてあげる事さえ出来ないのが悔しくて

苦しくて、苦しくて

長くてしなやかな指が灰皿を持ち上げてちゃぶ台に置くのを、ただジッと見つめる事しか出来なかった。

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