ラストゲーム
奈央は4年前から、マルチ組織
「アットホーム」の会員で、多額の借金を抱えているらしい。




「アットホーム」は、うちの会社より小規模なもののやり方の汚さでは、業界一という噂だ。




この会社は、化粧品などの美容商品を取り扱っており、何と、1本10万円もする美白化粧水を売り付けている。




勿論、その商品に10万円の価値は無く、よっぽどそこらのドラッグストアで販売している1本千円の化粧水の方が質がいいという代物だ。



奈央は、商品を売り、その成績によってマージンを得ることができるという金儲けに乗せられ、多額で商品を購入し、その商品が売れ残り、借金地獄に陥ったらしい。




アホだ。




よくそんな胡散臭い話に乗るよなー。




私には、理解不能だ。




そうか、これがうちの会社が鴨にしているアホという人種か・・。




私は、物珍しげに奈央を眺めた。




奈央の話は、続く。




借金のせいで生活に支障が出始めた奈央は、ホステス仲間のアイを騙し、その商品を売りつけ、借金を返そうとしたらしい。




そして、騙された彼女が激怒し、子供を刺した・・と。




まぁ、自業自得か?




私は、そう思った。




「私のせいで・・健が・・・。」




泣き始める奈央。




健君。母親が悪かったね。



私は、会ったこともない健君に軽く同情した。




どうやら泣くつぼに入ったらしく本気で泣き始める奈央。




「健、ごめんねー。」




泣きながら、謝る奈央が滑稽にみえて仕方ない。




「泣かないで奈央。」




ようやく、出てきた慰めの言葉が空々しくロビーに響く。




誰か、私をこのアホから解放してください。




私は、馬鹿らしいと思いつつも奈央の傍で慰め続けた。
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