ラストゲーム
「神宮 健君のご家族の方は、いらっしゃいますか?」




看護婦が息を切らしながらロビーに出てきた。




明らかに悪い予感がするが、私にとっては、救世主だ。




「はい、私ですけど。」




怪訝な表情の奈央。




奈央も何か悪い予感を感じたらしい。




そのまま奈央は、看護婦に連れられ、病室に入って行った。




はー、やっと解放された。



私は、肩を回す。




私の表情は、アホから解放された安堵感から晴れ晴れとしていた。




そんな私とは対照的に奈央は、更なる悲劇に晒されていた。




神妙な面持ちの担当医が重い口を開く。




「大変、申し上げにくいのですが、息子さんは、刺されどころが悪く、多量出血のため亡くなられました。」




その言葉に奈央は、泣き崩れた。




「健ーーーーーーーー!!」



奈央の悲痛な叫びが病室に響いた。




私がこの事を知ったのは、翌朝のニュースだった。




「昨日、新宿で幼児が刺された事件の続報ですが、刺された幼児は、多量出血のため、昨夜お亡くなりになりました。」




神妙な面持ちでアナウンサーから伝えられた言葉に、さすがの私も同情した。




「・・・奈央、私が地獄に落とす前にこの世から消えるかもな・・・。」




正直、奈央が地獄に落ちようとどうでもいい。




ただ、どん底にいる人間を、これ以上の地獄に落とすということは、死を意味する。




試験台変更か・・・。




せいぜい今の地獄で過去の悪業を償うことだな・・。



私は、もう二度と奈央と関わらないつもりだった。
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