ブラッティ・エンジェル
 わたくしが天使になって、もう何年と経ったのだろう。もう、十年も経ってしまったのだろうか?
 「サヨ!仕事ですわよ」
「ふぁ~い」
わたくしは、どうやらハズレをひいてしまったのかもしれない。
 わたくしについた見習いは、寝坊助の怠け者だった。全然完璧じゃないサヨ。
 わたくしはハズレだといいながらも、サヨの事が好きだった。
 まるで、妹でも出来たような気分。
 サヨはわたくしと違って愛嬌があって、明るくて、可愛かった。素直で、表情だって、感情だって豊か。
 わたくしが月なら、サヨは太陽。わたくしが夜なら、サヨは朝。わたくしが冬なら、サヨは春。
 サヨとわたくしは、正反対だった。
 最初、彼女を見た瞬間、うまくやっていける気がしなかった。
 どう考えたって、わたくしに合わないタイプだった。
 いまでも、うまくいっているのが不思議だった。
 寝ぼけているサヨの羽を掴むと、勢いよく扉を開けた。
 ドンッ!
 まだ半分も扉が開いていないのに、そんな鈍い音が聞こえた。
 恐る恐る、その先を見る。
 予想どおりに、そこには顔を押さえてうずくまっている天使がいた。
 炎のように真っ赤な髪の、男の天使。体格がすんごくいい。
 これはヤバイと、わたくしは逃げたくなった。
「あぁ、ウスイやっちゃった」
「うるさいですわ」
口に手を当て、茶化してくるサヨ。
 わたくしの頭は、もちろんパニック状態だった。
「あの、すみませんわ」
「痛い…」
思わずわたくしは、目を丸くしてしまった。
 体格がとてもよかったから、怖い人と思っていたら、声があまりにも弱々しく頼りなさそうだった。
「大丈夫でしょうか?手当てしますわ」
わたくしは彼を支えながら再び部屋に戻る。
 いくら声が弱々しいといっても、体はやっぱり重い。
 彼を立ち上がらせるのに、精一杯だった。
「大丈夫だよ。どこも怪我していないから」
「でも、少し休んでくださいな。わたくしが…」
わたくしが、なんなんだろう?
 他人がどうなろうと関係ないと思っていたわたくしが…。
 他人に興味ないわたくしが、もしかして、心配している?
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