ブラッティ・エンジェル
「わかったよ。俺にも覚えがある。大丈夫って言われても、すっきりしないんだよね」
そう言って、彼は初めてわたくしの顔を見た。わたくしも、初めて見た。
 彼が少し驚いたような顔をしたのを、わたくしは見逃さなかった。
 いったい、何に驚くのだろうか?わたくしとは、初対面のはずなのに。
「もしかして、あのウスイ?」
あのって、どういうことなのだろう。わたくしの変な噂でもあるのだろうか?
「ええ、そうですわ。で、あなたは?」
「あぁ、俺は、エンテン」
「おい!エンテン!オレをおいてくんじゃねぇ!」
ブロンドの髪の小さな天使。何となく、サヨに似ている。
「で、こちらがユキゲ」
エンテンは、ユキゲが怒っていることがわからないのか、わからないふりをしているのか、ニコニコと紹介してくれた。
「俺ら、新人なんだ」
こいつ、天然だ。誰が見ても、わかる。そして、わたくしと違う事も。違いすぎる。
「私はサヨね」
「よろしくね」
「こっちは、大ベテラン。きっと、あと少しで昇進だよ」
「すごいなぁ~。そこまでは知らなかったよ」
「立ち話もなんだし、はいんなよ」
サヨは、本当にいい子だ。誰にでも愛想がいい。誰とでも、話せる。
 本当に、わたくしと違う。綺麗な子。
「本当に、羨ましいですわ」
思わず、わたくしは心の呟きが声に出てしまった。
 慌てて口を塞ぎ、周囲の確認。
 ユキゲもエンテンもサヨも、楽しそうにおしゃべりをしていた。
 わたくしのことなんか、忘れているように見えて、目の奥が熱くなった。そんな気がした。
「そこ、わたくしの部屋なんですけれど」
「い~じゃん。もう、私の部屋同然」
そうとだけ言うと、彼女は、彼女たちは、私の部屋に入っていった。
 これが、きっと、全ての始まり。

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