ブラッティ・エンジェル
「まぁ、本人が自覚するのを待つかな」
「そんなんじゃありませんわ」
わたくしが恋するなんて、有り得ない。そんなこと、わかっている。
「そうだね~。たぶん、エンテンは恋してるんじゃないかな?」
「エンテンが?」
わたくしは驚いた。あの体格のわりにはおっとりしていて、虫も殺せないような人が?
 ヒナガみたいなタイプじゃないと思っていたのに。
「意外ですわ」
「そぉ~?エンテンみたいなやつに限って、いろいろと溜め込んでんだよ」
「…」
今度、エンテンを話してみようかな?エンテンなら、いい相談相手にもなりそうだし。
「あ、エンテンだ」
噂をすれば何とやら…。
 タイミング良すぎないか?
「お~い、エンテン!」
サヨが手を大きく振って、呼びかける。
 すると、エンテンはハッと顔をあげた。
 相当考え事をしていたのか、心ここにあらずって感じだった。
 でも、それは一瞬のことで普通は気がつかないぐらいの違いだった。
「あ、サヨとウスイ」
そう微笑みかけたエンテンの顔には、どこか影が見えたような気がした。
 これも、気がしただけなのかも知れないが。
「あのね、ウスイが聞きたいことがあるんだって」
「べ、別に、そんなのありませんわ」
「嘘つけ~。あ、私がいるからか~」
言いたいことを並べて、サヨは爽やかな笑顔で去っていった。それも、何も言わせないとでも言いたそうに、猛スピードで。
 残されたわたくしたちは、しばらくポカンとしていた。
 口火を切ったのは、エンテンだった。
「実は、俺も相談したかったんだよ。ウスイなら、相談しても良さそうだから」
その顔には、いつもの笑顔はなく、迷子の子供のような不安と緊張があった。

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