ブラッティ・エンジェル
「それ、酷すぎますわ」
数分後。わたくしは、自室で眉を寄せていた。
 椅子に座って、握りしめている手を見つめるように、エンテンは項垂れていた。
 彼は今、いったいどんな顔をしているのだろう。
「どうすればいいのか、わからないんだよ。
 彼女の願いを叶えたい。俺はどうなってもいいからさ。
 でも、それが本当に彼女のためになるのかわからない」
「エンテンは、彼女を救いたいんですわね」
「当たり前じゃないか。彼女には、生きて幸せになって欲しい。
 でも…、彼女が望むのなら」
わたくしが言った言葉が、エンテンの運命も彼女の運命も変えてしまう。
 どうしたらいいのだろう。
 わたくしは、愛だとか恋だとか、友情とか、よくわからない。
 だから、正直言うと、エンテンがなんでそんなに他人のために悩まなくてはいけないのかわからない。
 わからないだらけのわたくしに、どうしろと言うのだろうか。
「エンテンが…思うようにやればいいんじゃありませんの」
「それって、俺に…」
「エンテン、人間の魂はどうせ廻りますわ。彼女を、これ以上苦しめたくないのでしょう?」
わたくしはいったい、どんな顔をしていたのだろう。
 能面のような顔だろうか。それとも、答えを見つけた人間のような顔だろうか。
 どっちでもいいが、この言葉がどんな結末になるかはうすうす気がついていた。
 それでも、わたくしにはそれが一番いいと思っていた。

 数日後。エンテンは処罰された。

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