ブラッティ・エンジェル
「あら?あなた、新しい人ですか?」
「まぁ、他に比べれば」
「そうでしたか。はじめまして。私はヒナガです」
握手を求める手が伸びてきた。
 真っ白でほっそりしてて、この世のものじゃ無いくらい綺麗だった。絵か彫刻か、そういう芸術もんだった。
「俺は星司。よろしくな」
握手をしようと手に力をいれたが、どうも俺の手は芸術品に触れるのに勿体ない代物だった。
 だから、俺は手を挙げるだけの挨拶をした。
 望んでいた反応を待ちわびている彼女の手は、気まずそうにカップに触れた。
 一口、コーヒーを運ぼうとしたあいつは、なにか思い出したように首を傾げた。
 そして、俺の方をじっと見つめてきた。正確には顔を。
「あなた、この前事故に遭いそうになった子?」
「この前?」
ごく最近の俺の生活には、そんな危険は無かった。むしろ、平和そのものだった。地獄というよりは天国だったし。
 轢かれそうになったのは…。
「それって、2年前じゃないの?」
「あら、この前じゃないですか」
楽しそうにニッコリと笑って、考えが当たっていたことに喜んでいた。
「でも、2年も経てば人間の男の子ってこんなに成長しちゃうんですね」
「人間の、男の子?」
俺が眉をひそめると、しまったと言うような顔になって何か慌てだした。
「えっと、その…」
「男の子って、俺もう17。今年もう18なの。子供じゃないの」
「え?」
今度はヒナガがハテナマーク出した。
 さすがの俺も突っ込みどころが違うな、って思うわ。
「え?」
俺もそんな反応が来るなんて思っていなかったから、驚いた。
 いったい、何に慌てたのだろう。
 その時の俺にはさっぱりだった。
「あぁ、そうですね。申し訳ありません」
ほっとしたようにおっとりと微笑んだ。
 まじで俺はあいつにベタ惚れだった。
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