ブラッティ・エンジェル
太陽の光
 サヨは体のだるさを感じながら、仕事を今日もこなしていた。疲れが出たのだろうか?それにしては酷いような気もする。
「おい。大丈夫かよ」
最近、自分の羽で飛ぶことを覚えたユキゲが、心配そうに見つめてくる。
 どうもしてないとでも言いたそうにサヨは微笑むが、どう見ても大丈夫そうには見えない。だからと言って、サヨを休ませることも出来なかった。天使の仕事は重要だ。それを怠れば大変な事になる。世界の理を狂わせるとも聞いたことがある。実際の事は知らないが。
 最近のサヨは動きが鈍くなっていった。体力がなくなったように見える。疲労だろうかと思ったが、それでここまで酷くなるわけがない。病気という事もない。天使は神のご加護故に、病気をしないはずだ。加護さえ、あれば。
 ユキゲは嫌な考えに思い当たった。それは、起きてはならない事。一番犯してはならない禁忌。
 嫌な汗が背中を伝う。
 サヨに限ってそんな事はないと、信じているのに。考えはどうしてかぬぐい去れない。
「もしかして、お前…」
「サヨ!?」
遠くから、といってもそこまでは遠くないところから、駆け寄ってくる1つの影が見えた。
 苦しそうにゆがんでいたサヨの顔が一気に、明るく光を灯した。
 学校帰りなのか、初めて見た制服姿はどこか可笑しくて笑えた。チェックのズボンも、紺のブレザーも、シャツもシワだらけのよれよれで、彼の日常が少しうかがい知れた。
「学校帰りなの?」
声の届くところまで来た彼に微笑みかけると、ニッコリと笑い返された。思わず、顔が赤くなる。いつになったら、慣れるのだろうか?
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