ブラッティ・エンジェル
 そこで、さっき自分が言ったことを思い出した。
「あっ!」
両手で口をふさぐ。恥ずかしいせいで体中が熱い。
「いやっ、その、違うの。いや、可愛くないって訳じゃ無くて…。無意識で言っちゃって、その、えっと」
何言ってるのか自分でもわからなくなっている。
 彼が首を傾げたの納得ができる。
「おかしい」
彼はクスクスと手の甲を口に当てて笑った。
 私はますます熱くなった。
 おかしい。変な子に思われちゃったよ、絶対。
「今日、なんか調子がおかしくて、変なこと言っちゃうの。いつもは、こんなんじゃないんだよ。変な子じゃないんだよ。」
私は立ち上がり背伸びをして、彼の顔に自分の顔を近づけて主張した。
 こっちの方が変な子に思われる行動だとあとになって気がついた。
「別に僕、変な子なんて言ってないし、思ってもいないよ。面白いなって思っただけだよ。」
「そ、う」
私はゆっくり地面にかかとをつけた。
 この時私と彼の身長差に気がついた。
 カワイイ顔をしていたから小柄なのかと思っていたけど、そんなこと無かった。私より頭一つは大きい。
 なんか負けた感じがして悔しくなった。自慢だけど、私は身長は高い方で普通の男の子ぐらいで、こんな差をつけられたことはなかった。
「ねぇ、このあと時間ある?」
時間ならある。今日はもう仕事が入っていない。
 けど、なんで?
「あるけど」
「じゃ、食事に行こうよ」
今はおやつ時だろうか、甘いものが食べたい気がした。
 私がそんなどうでもいいことを考えていたら、彼はいつの間にかポケットに財布を突っ込んでいて、私の手首を掴んでいた。
 私は彼に引っ張られるようにアトリエをあとにした。


< 35 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop