ブラッティ・エンジェル
 部屋に駆け込んだサヨは、一回深呼吸をしてから通話ボタンを押した。
 嫌な汗が、体中から吹き出る。
「もしも…」
「サヨの馬鹿ヤロー!!」
へ?
 サヨの勇気を振り絞って出した声は、耳が痛くなるほどの望の怒鳴り声でかき消された。
「なんで、電話に出なかったのさ。俺がどんなに心配したかわからないだろ。
 毎日毎日電話して、それなのに一回も出てくれなくて。
 毎日毎日メールしても、何にも返してくれないし。
 たまに留守電入れても、脅迫じみたことも言ってみたのに…」
何!?今脅迫って…。後で、留守電聞いてあげないと…。
「何にも連絡ないし、街でも見かけなくなったし。
 サヨに何かあったのかもとか、嫌われたとか。考えていたことを全部並べたら、一日じゃ話しきれないくらいになる」
なぜか不意に、頬が熱くなる。
 そんなに、私のことを思ってくれてたの、なんてサヨは呑気なことを思っていた。
「夜だって、眠れなかった。バイトだって失敗ばっかだし、学校では点数落とすし。俺、今年から就活なんだぞ、フリーターになったらどうしてくれるんだよ」
そんなの、私のせいじゃないと思うけど…。
 サヨは目を据わらせた。
「マジで、嫌われたんじゃないかって思って…」
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