ブラッティ・エンジェル
「ウジウジしすぎなんですけど…」
肩の上に乗っているユキゲが、大きく溜息をついた。
 仕事が終わって天界に帰ってきてそうそうの事だ。
「ウジウジって、誰が?」
「お前しかいねぇよ」
「私が?まさか。ユキゲの目、節穴じゃないの?」
サヨは本気で心配しているユキゲをよそに、わざとらしく溜息をするふりをした。
「しつれーなヤツだな。オレのこのキラキラと綺麗な目のどこが節穴なんだ」
ユキゲはサヨの鼻の先で青い目を大きく開き、指さす。
 サヨは疑わしそうに目を細めて、その目を見る。
 しばらくの間にらめっこをした後、サヨは小さく頷いてスタスタと自室へと歩き出した。
 置いて行かれたユキゲは、あの頷きは何だ?っと唖然としていた。
「おい、何に納得したんだよ」
サヨに追いついたユキゲは、焦った様子だった。
 それを見たサヨは、クスリと小さく笑った。もっとイダズラしてやりたくなる。
「え~、教えて欲しいの?ど~しよ~かな~」
と、馬鹿にしたような笑顔を振りまいていたとき、軽快な音楽がサヨの上着のポケットから流れた。
 サヨの顔が一瞬にして強ばる。
 手がぎこちない動きで携帯を取り出し、開く。
 画面を見た目が震え、それが全身になる。
 それは、サヨの部屋の前で起こった。
「ユキゲ、どうしよう、望からだ」
自分ではどうしたらいいのかわからない。
 考えは、空回りするばかり。
 ユキゲは何でもないような顔で、答えを言った。
「そんなの簡単じゃん。出ちまえよ。自分に正直にな」
「でも、何を話したら」
「何でもいいじゃん。自分の思ったこと全部はなせよ。後悔すんなら、やっちまって後悔する方がオレは好きだ」
ニカッとユキゲは歯を見せて笑い、親指を立てた。
 何で、こんなに簡単なことを気づかなかったんだろう。
 サヨは大きくユキゲに頷いて見せて、部屋に入っていった。
「全く、世話の焼けるヤツだ」

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