ブラッティ・エンジェル
「ボクはね、先代の魔王なんだヨ」
「はぁ?」
セイメイ自身は大いに真面目そうだけど、ふざけてるとしか思えない。
「信じられないのは無理ないネ。普通、魔王はかわらないものだから」
「そうよ。あり得るわけない」
サヨの頭は、何が何だか訳がわからなかった。もう、パンクしそうだった。
「でも、これしかなくてネ。キミの罪をもみ消すための代価は」
そこでサヨは、やっと長年の疑問の謎が解けた。もちろん、セイメイが魔王だったということが前提で。
 つまり、セイメイが魔王の座を譲る代わりにサヨの罪をもみ消し、罰を与えなかった。
 そういう事だったのかもしれない。
「最近の天使はみんな優秀でネ。ちょっと、退屈してたんだよネ。そんなときに、キミが現れたわけ。
 最近では珍しくなった、不良チャン。ボクは静かにキミのことを監視したヨ。どんなエンディングを迎えるか、気になってネ。
 まさか、あんなエンディングを迎えるなんてネ」
セイメイが、悲しそうに視線を落とす。
 何が、そんなに悲しいんだろう。
「キミを罰する身でありながら、キミたちのハッピーエンドを望んでいたヨ。でも、いつしかボクは、彼に嫉妬心を抱いていたみたいだ。ホント、気づかないうちにネ。
 きっと、ボクが魔王の座を降りて天使になったのもキミに近づくためだったのかもしれないネ」
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